試作九号機ver.1.0

     Micro Hovercraft Laboratory



開発経緯その2


試作四号機以降の解説になります。
 
 息子が「今のホバークラフトの形では一般受けしないんじゃないの?」との一言で、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2のホバーボードが頭に浮かびました。そのころ某高級車のCМでもホバーボードを目にすることもあり注目はしていました。ということで例のごとくネットで関連する動画がないか探してみました。
最初にたどりついた動画がこちら → https://www.youtube.com/watch?v=RCmQnM_iFhQ
そのプロジェクトのHP                  http://hendohover.com/

 しかし反重力装置はおろか超電導も当方には手に負えない技術なので、ホバークラフト同様エアクッション効果を利用したホバーボードのコンセプトで開発しました。


試作四号機Ver.1.0
 機体のレイアウトとしてはドローン(マルチコプター)のように前後左右に浮上ユニットを配置するのがバランスが良いと考えました。また前後にプレートを分割したのは浮上のみで推進装置がなく、進むために足でキックする空間が必要だからです。
 またあえてスカートは大きくせず、ゴムのシールで必要最小限のクリアランスを確保できればと考えました。見た目重視のデザインです。そのため極く平らな場所でしか動かすことができません。
 前後のプレートにダクテッドファンを各2基、LiPo電池を1個搭載して、その間をアルミ角パイプで接続してあるだけのシンプルな構造です。
 アルミ角パイプのフレームに載せてあるのはスケートボードそのものです。車軸部分をU字ボルトで固定しましたので、乗り心地はそのまんまです。滑り止めの表面や全体のしなりなどとても具合が良いです。しかもこのスケートボートはたったの1,999円でした。
 つぎにモーターのコントロールをする方法を検討しました。とはいってもパワー調整だけですが、いちいちしゃがみこんで調整するのは面倒だし、体勢的に無理があります。ということで無線化=ラジコン化してみました。幸いもともとラジコン用の電動アンプを使用しているので接続には都合がよいわけです。
 ビジュアル的にもコントローラーを持って操縦するのは カッコイイのではないかと妄想しましたが、実際に送信機を片手に持った状態でバランスをとるのは非常に困難でした。(トップページの動画参照)
 スカートを無くしたため浮上高さがほんのわずかで、バランスを崩すと引っかかりもあり動きもスムーズに行きませんでした。まだ改良の余地があります。

          




試作四号機Ver.1.1
 浮上力を増加するためにダクテッドファンの噴出部のダクト形状をストレートからなだらかなアールにしました。ベルマウスの反対側になります。またスカート代わりのゴムシールの滑り抵抗を減少させるためにブラシを追加しました。
 その上でそもそも運動神経の悪い私が、スケートボードを乗りこなせるわけがないので、バランスを取りやすくするためにハンドルを付けました。方向を操作するものではないので「手摺り」といった方が良いかもしれません。取り外し式なので将来これ無しでも乗りこなせるといいのですが・・・
 キックスケーターのようになりましたが、姿勢を保持させやすくなりました。また片手に送信機を持つことも無理があるのでコントローラーは有線にしてボードに取り付けました。

          


 さてこちらは子供向けのイベントに使えるのではないかと思って製作しました。しかしながら思っただけでまだ実際には活躍していません。今年(2017年)はイベント等で超小型ホバークラフトを紹介する機会があればよいなと考えています。

試作伍号機Ver.1.0
 コンセプトは"人間カーリング"です。ご覧のとおり推進装置がありませんので、外から押して動かします。大きさも小学生くらいの子供を想定して小さくしましたが、60sくらいなら大人でも乗機可能です。体育館などの平らな床面の屋内でホバークラフトの動きを体感してもらうために製作しました。
 ホームセンターで3,000円くらいで売っている家庭用電源AC100Vで動くブロアーを使用しました。そのほかの構造は従来と同じく、ベニアとスチロフォームの複合材と薄手のビニールシートのスカートです。
 延長コードを使用しますので動く範囲に制約がありますが、電池切れや燃料切れを心配することなく遊べると思います。緊急停止も延長コードを引っこ抜くだけです。
 さて今回も機体の色は動力ユニットの色に合わせたため緑です。期せずして、今までの試作機の機体色と合わせると赤・黄・緑と信号機の色になりました。(だからどうした・・)



試作伍号機Ver.2.0
 2018年のMaker Faire Tokyoに出展した機体です。座席を取り付け、平面形を円にしました。本機で子供たちの体験試乗したところ大盛況でした。2日間で100人ほど乗せたんじゃないでしょうか。推進装置がないため押し出してあげなければならないため、イベント終了後の数日間は筋肉痛でした。
 参号機はリフトファンユニットを1基から2基に増設、四号機はスカートやタイヤ駆動ユニットの追加など、ともに少し改良してあります。


試作六号機Ver.1.0
 ホバーボードを試作四号機で製作したもののうまくいきませんでした。足で蹴って進ませるというコンセプトは推進装置を無くす良い考えと思いましたが、バランスを崩してしまうため、実際に機体を操作することができませんでした。
 そのためこの六号機では蹴り出す姿勢をしてもバランスを保つのに都合がよい機体形状にしました。トップページにYouTubeのリンクを付けてありますのでご覧ください。いい感じに走行できるようになったと思います。姿勢を保つためのハンドルを折り畳み式にしたり、キャスターを付けてキャリーできるようにしました。
                           

2020年10月3・4日に東京ビッグサイトで開催されたMaker Faire Tokyoの一場面です。会場外の屋外広場で実演のために走行しようと準備しているところです。
コロナ禍が一時的に少なくなった時期ですがフェイスガードとマスクで防護しての出展になりました。隣は会場のスタッフさんです。


 この機体のダクテッドファンユニットは試作四号機のものを流用しましたが、部品の製作方法を木材の削り出しから3Dプリンターに変更しました。下の左側の写真は木材を削り出したもの、中央は3Dプリンターで製作したものです。ベルマウスの微妙なカーブも正確に再現でき、強度も十分にあります。右側の写真は3D-CADでデータを作成したベルマウスを3Dプリンターで製作している途中です。
 こういったデジタルな製作方法や機材が個人でも利用できるとは、ほんの少し前まで夢にも思いませんでした。小刀で鉛筆が削れないとか雑巾が絞れない子供が増えたみたいな話を聞きます。それらが必要ないとは言いませんが、新しいモノづくりの可能性も広げていってほしいと思います。
                               


試作七号機Ver.1.0
 今まで製作した超小型ホバークラフトは、公園の駐車場を利用して走行させています。大型バスが何十台も停められるほど広いのですが、観光シーズン以外は閑散としています。またこの駐車場は勾配がほとんどないので、上り坂が苦手な機体を走行させるのに好都合なのです。(通常駐車場は2〜3°程度の雨水を排水させるための勾配がありますが、この程度の坂でも発進ができなかったり走行時流されたりすることがあります)
 しかしこの駐車場は冬期間(12〜3月)は閉鎖になります。この時期の降雪によるためですが、それならば雪上を走行できる機体を作ろうと考えました。以前にエンジン機(試作弐号機)でプロペラのの直結による推力の増加を確認しましたので、ツインエンジンならば推進力に余裕ができ雪上の多少凸凹でも走行できるのではないかと考えました。ここ新潟では田んぼの上に雪が積もれば広い平原が出来上がるのです。毎年・・・と思っていたら今年(2020年)の冬は全く積雪がなく、雪上走行はかないませんでした。雪上走行を目指して秋から製作を開始していたのですが・・・
 機体は雪=水に濡れるため、今までのベニヤ板と発泡スチロール板によるコンポジット構造は使用できません。なにしろ水性の木工ボンドで張り合わせていますので、塗装してあるものの耐水性はありません。。耐水性の接着剤を使用することも考えましたが、今回はイレクターパイプという接着できる鋼管を使用しフレーム構造にすることにしました。コンセプトはズバリ「巨大かんじき」です。フレーム構造でスカートを透明シートにしてあるので足元から地面が透けて見えるようにしたつもりですが、強度を考えて糸入り透明シートにしたところ、あまり良く見えなくなってしまいました。今回は機体が大きすぎるため(1.5×1.4m)中央部分から前後に折りたためるようになっています。
 機体の方向変換は座席の左右にスロットルレバーのハンドルを取り付け、エンジン出力の差動で行います。
この機体は2020年のMaker Faire Tokyoに出展しました。赤い参号機と比べると大型機(超小型ホバークラフトの中では)なことがわかると思います。
                     


試作八号機Ver.1.0
 今まで製作した超小型ホバークラフトは、エアクッションのプレートの上に座るあるいは立つ乗機姿勢をとってきました。スカートが膨張して地面からリフトする間隔もたかだか10pといったところでした。それでもホバークラフトらしく走行して機能はしているので、それはそれで満足していました。しかし、もう少し疑似的でもいいから空中に浮いている感じは出せないものかと思いました。そもそも私は飛行機やヘリコプターといった航空機にあこがれを持っていました。とはいえ私には実際に人が乗るようなものを作ることは到底不可能なので、せいぜい模型を作ったりしていました。(1982年からラジコン電動ヘリコプター製作など・・プロフィール参照)また超小型ホバークラフトを製作し始めた理由の一つに「ホバークラフトも航空機の一種なんじゃね?!」という思いがあります。ならばそれっぽいものを作って乗ってみたいということです。
 前置きが長くなってしまいましたが、とにかく地面から自分の足が離れて浮遊しているイメージになるような形態を考えました。@跨るようにすれば地面から離れたことがわかるし、機体が降下した時でも操縦者が自立することができる。Aエアクッション部分の背を高くすれば機体のリフト量は大きく出来ますが、スカートの形状を保持するための工夫が必要になります。本機では底部のプレートを懸架するようにしています。(特許出願済)Bエアクッションのプレートを4つにしたのは各浮上力の作用点の中心に操縦者を置けば安定するだろうと考えたからです。同様の形態としてドローン(マルチコプター)がありますが、ホバークラフトの場合、前後の浮上力に差をつけて機体を傾けても推進力は発生しませんので、安定化のための形態です。
 上記のコンセプトで設計して製作しました。エアクッションプレートは従来の合板/スチレンボードのコンポジット構造です。このプレートを結合するフレームはアルミ角パイプとアルミ板をネジ止めして組み立ててあります。ただネジの数は半端ではなく全部で100本を超えています。材料をケガいて穴あけ、タップを切るといった工程は全部手作業で膨大でしたが(通り穴とタップ穴が必要でネジ本数の2倍以上)、機械加工は好きなのでさほど苦にはなりませんでした。それより組み上げた時にネジがビシッと決まるのは快感です。
 推進装置は今回はダクテッドファンにしました。小口径な分効率は悪いのですが、コンパクトなことやプロペラにすると安全のためにガードや囲いが必要になります。・・・試作参号機ではプロペラにしましたが結構面倒くさかったです。そのほか方向転換の方式は自転車の変速機ワイヤを使って推進ダクテッドファンごと傾けるベクタード・スラスト式と左右のダクテッドファンをオン/オフさせる出力差動式の併用です。しかし機体が大きく重いため操縦性は決して良くありません。
 そんなこんなで製作してMaker Faire Tokyo 2022に出展しました。デモ走行の動画のSNSがバズったのは全くの予想外でした。通常ですとせいぜい数十程度の閲覧数でしたので、その×10000倍が瞬く間に積みあがっていくのは他人事のようでした。
 
  
 その評判が海外にも伝わったようで、ある日メールで取材依頼がきました。イギリスの著名なYouTubeプレゼンターのトム・スコット氏(Tom Scott)からでした。とはいえ最初は名前も知りませんでしたが、ウィキペディアで調べるうちに2022・2023のストリーミー賞を受賞するなどとても実績のある方とわかりました。
ということで、私の地元の体育館を借りて撮影したのがこの動画です。
専属のカメラマンや通訳を連れてきたり、ドローンを使って撮影したりと感心する
ばかりでしたが、私が一番感心したことがトム・スコット氏がこの試作八号機の操
縦がとても上手だったことです。上記の解説の中で述べたようにこの機体の操縦は
簡単なものではありません。しかしスコット氏はすぐに操縦の勘を得て、信地旋回
や浮上しながらリフトの出力を調整してブレーキングすることを見せてくれました。
私は教えませんでしたし、はっきり言ってできません。きっと今までいろいろな経
験のなせる技なのだろうなと思いました。
                                 

試作九号機Ver.1.0→2.0(その1・その2)
 試作八号機の浮上能力はリフトファンの50〜60%程度しか使用していません。そこでエアクッションのプレートは2つでもいけるんじゃね?!ということを思い付きました。クッションプレートは作るのが面倒くさいけど八号機のを流用すれば作らなくて済む!(ここ結構重要です) フレームの金属加工は好きなので楽しい!で、試作九号機を試しに作ってみました。(文字通りですね) そうしたら思惑通りなんとか浮き上がるではありませんか!
しかし設計が甘く、取り付けプレートが変形したり、推進用ダクテッドファンが1個では能力不足でかつリヤ配置では操縦性も悪いと判断しました。早速ver.2に改造して、上記に述べたトム・スコット氏が撮影する際に最後に1回だけテストしました。自転車のように乗り出しと降りるときに不安定ではありますが、スカートが膨らんで充分クッションが効けばそれなりに安定して走行しました。
 これはいける!! クッションプレートは4つあるから2台出来る!!と調子に乗って2台製作してしまいました。(それで、その1・その2というわけです)
つまり試作9号機=((試作8号機-1)÷2+1)×2ということです。・・・±1はフレーム部分の差し引き
とはいえダクテッドファン用のアンプも共通なのですがコネクタの抜き差しや取り付け替えが面倒なのでそれぞれに専用にしています。

    

           
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