Micro Hovercraft Laboratory



製作その3



3.推進エンジンユニット    推進ユニット関係の図面はこちら → MHL-07-1.pdf (MHL-07.pdf)
注意! : 本図面は記載のエンジンと部品に対して構造・寸法を決定していますので、異なる部品を使用する場合は、個別の設計を考慮してください。
※2019年9月に推進ユニットをギヤダウンからプロペラ直結に変更しました。最新のユニットは3.1.1で説明いたします。
3.1.0 ユニットの構造

 推進エンジンユニットは農機具のポンプから取り外したエンジンを使っています。(仕様のページを参照) このロビンエンジンのメーカー富士重工は、前身である中島飛行機が紫電改に搭載した名作エンジンハ-45(誉:ほまれ)を開発しました。よって航空エンジンマニアの私としては好きなブランドです。
 ロビンシリーズは汎用エンジンとして扱いやすく、ポンプをはじめとするいろいろな機器に広く使用されていました。 そのため、現在このシリーズの国内向け販売は中止しましたが保守部品は入手可能です。
 なお写真のポンプは「ヤクオフ!」で出品されていた同型エンジンを4000円で落札しました。(予備用です。ごくたまに本来のポンプとして家庭農園で使用することもあり、家人に怒られないためにポンプとして使えるようにしました)
 

 エンジンと自作した減速ギヤボックスをつなげて工業用扇風機のファンを駆動しています。当初は方向転換の機構はラダー式でしたが、ベクタードスラスト方式にしたため推進ユニット全体を振る構造になり、回転する台の上に乗せるようにしています。

 推進ユニット・浮上ユニット共にねじ4本で簡単に外せるようにしています。走行した後はユニットを逆さにしてガソリンを抜いています。また機体を保管している場所が狭い階段の上り下りが必要な2階にあり、分解して持ち運びを楽にする必要があるのです。

 排気延長管は水道部品のジャバラ管です。(これも家にあった余り部品です) キルスイッチ(エンジン停止スイッチ)をハンドル手元で操作できるようにコネクタを介して延長してあります。



 

減速ギヤボックスは2枚のアルミのプレートをスペーサではさんで取り付けた簡単な構造です。組み立てるボルトはステンレスのキャップボルトを使い、防錆と強度を考慮しました。(2番目の写真に写っているプラスねじは、容易に取付・取外しできるようにしたユニット取り付け用のねじです)

 ユニットを傾ける構造として、ベアリングで支持したプレートをワイヤで引っ張る構造です。

 構造部材はプレート、スペーサとも加工が容易で錆びないアルミ材を使用してあります。素材は指定した寸法の切板として購入できます。(ネットでモノタロウやヤクオフで探してもらえば取り扱っています。

 アルミの材質の選定をします。純粋なアルミは柔らかく、強度や加工性が劣るので板材はアルミ合金A5052又はA2017(ジュラルミン)を使用します。本機ではそれほどの強度は必要はなく、耐食性の良いA5052を使用しました。同様に丸材はA5056です。


 前にも書きましたが、数千rpmと高速回転するエンジンの減速ユニットは安易な工作では故障や破壊して危険です。そうならなくとも十分機能しないことも考えられます。初心者にはハードルが高いかもしれませんが、勉強しながら作るか、経験者のアドバイスを得てください。ポイントとしては

 @部品の精度を上げること。スペーサの長さは±0.2o、穴明けの位置精度は±0.3o程度、ギヤ廻りは±0.1o程度の精度は必要です。

 A加工や組み立て精度を確認するためにデジタルノギスやスコヤ等の測定器が必要です。

 B機械部品はスムーズに動くことが肝心です。確認しながら組み立てていきましょう。


3.1.1 プロペラ直結推進ユニット








 

 走行させているうちに、だんだんギヤから騒音が大きくなってきたので、エンジン側についているピニオンギヤを確認すると、歯面が変形するほどバリが出ていました。単気筒エンジンの燃焼・爆発により、特定の角度範囲で衝撃的にトルクが掛かるようです。このままではギヤだけではなくエンジン自体の寿命も縮めそうです。そのためギヤダウンせずプロペラ直結にすることにしました。

 エンジンは反時計回転なので逆ピッチ」のプロペラが必要です。適当な材料から削り出すことも考えましたが、高速で回転するため、生半可な工作では危険なので既製品を探すことにしました。


 プロペラはラジコンのガソリンエンジン用のものです。逆ピッチの18インチ×ピッチ10です。このサイズの逆ピッチのプロペラを見つけるのに苦労をしました。Amazonや海外のネットショップで探しましたが、やっと日本国内のネットショップで見つけました。

購入したネットショップ 「RC web shop  RC AIRLINER 38


 プロペラをエンジンに取り付けるためには保護ガードがあるため、シャフトを延長しなければなりません。エンジン側のシャフトにはM8のオネジが切ってあるので、延長シャフトは両端にメネジを切った精密シャフトを使用しています。エンジン側に付いているアルミカップリングはトルクを伝達するよりも、エンジンの軸と延長シャフトの芯を出すためとネジが緩まないようにための逆転防止に固定する既製品のカップリングです。


 プロペラの固定は反対側のネジにボルトで取り付けます。プロペラの座になるカラーとワッシャーは下記の3.2で紹介している旋盤で製作しました。

構造の詳細は上記pdfファイル、MHL-07-1で図面が参照できます。


 実際にエンジンでプロペラを回してみると、今のところ心配していた軸のブレや振動、緩みなどは無く安心しました。


3.2 加工設備
 左の写真は当研究室の加工設備です。(ボール盤・旋盤・グラインダー)

 一般の人には縁遠い機械かもしれませんが、子供の頃から機械いじりが趣味の私がコツコツ集めたものです。ボール盤は33年前に購入し、旋盤は26年前です。しかし加工能力はプロ用とは比べるべくもなく、ボール盤はΦ6.5チャックですし、旋盤の台は台所のまな板です。

 本来模型サイズ用の加工機械で、これらの部品を加工するのはそれなりに苦労しました。この程度の機械で乗用のホバークラフトを作ってしまうのは、我ながらスゴイと思っています。(自己満足ですが・・・)


 そのほかに電動工具としてジグソーやハンドドリルが必要です。今ではホームセンターやネット通販で容易に入手が可能でしょう。



 減速ユニットの製作について説明しました。今後改造するとすれば、エンジン直結でプロペラまたはダクトファンにすることです。走行に必要な推力が得られれば、簡単で軽量化になり性能も向上します。この超小型ホバークラフトがよりシンプルな構造になり、製作する人が増えてくれれば、このカテゴリーのすそ野が広がるのではないかと思います。電動化も機会があればチャレンジしたいと思います。(追記:参号機で実現させましたので、次の構想としては、大型化して地面効果翼機を利用した飛行機のようにする方向か、あるいは逆にもっと小型化してホバーボードのようなものと考えています)

(※管理者注 上記の内容は2019年9月現在では地面効果翼機以外は実行しました。今のところ飛行機のような形態にすることは考えていません。)

           

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